高橋先生のブログ

2016年ART(体外受精)の全国統計

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少し遅くなりましたが、2016年のART(生殖補助医療:体外受精など)の統計結果が昨年に出ましたので、ご紹介致します。

統計は、2016年に妊娠した方が、全員出産してのデータがそろってから出されるので、現在、2016年のデータが最も新しいのです。

図は、2016年のART治療周期数です。年々多くなっているのは継続しています。

約45万周期おこなわれましたが、体外受精が約9万周期、顕微授精が約16万周期、凍結胚移植(子宮内)が190,541周期でした。体外受精と顕微授精の比率は、およそ1/3が体外受精で、2/3が顕微授精の割合です。今は顕微授精の方が多くなっているのですね。


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図は2016年の出生児数です。

体外受精と顕微受精(ICSI)での出生児数は、およそ4,500人ずつでほぼ同数でした。これはこの10年間ほぼ横ばいで同じ数です。

一方、凍結胚移植での出生児数は急増し、融解胚子宮内移植での44,484人、その他で178人、合計44.662人でした。

合計で54,094人がART(体外受精関連)で生まれているのです。

およそ18人に1人がARTで生まれている計算になります。

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これが2016年の妊娠率、流産率などの成績です。

およそ35歳ぐらいまでは、妊娠率(青線)は約40%(胚移植あたり)ですが、その後低下し、40歳で約25%、43歳で約15%、45歳で約8%の妊娠率です。

一方、流産率(紫線)は、35歳ぐらいまでは約20%ですが、その後上昇し、40歳では流産率約35%、43歳では50%を越え、44才以上では少なくとも2/3は流産してしまうのです。

採卵しても胚移植できないでキャンセルになったり、妊娠しても流産する方がいらっしゃるので、実際には、ARTの治療をしようとした周期に、出産まで到達する生産率(緑線)は、35歳ぐらいまで約20%(5回に1回)であり、40歳で10%(10回に1回)、45歳では1%未満となってしますのです。

体外受精を40歳からと考えるのは、もう遅めなのですね。当クリニックでは37才以上の方には体外受精をお勧めしていますが、35才を超えたならば、もう体外受精も考えてもよいかもしれませんね。

いずれにしても、女性の年齢が最も関係しているのです。

なお、IVFとICSIの妊娠率、流産率ですが、新鮮胚移植でみますと、胚移植あたり、妊娠率はIVFで22.7%、ICSIで18.2%、流産率は、IVFで25.9%、ICSIで28.5%と、IVFの方がICSIよりも妊娠率が高く流産率は低いのです。ICSIの方が妊娠率が高いと誤解される方がいらっしゃいますが、ICSIは、基本的には受精をさせる技術であり、妊娠率を上げる技術ではないことをご理解下さい。