高橋先生のブログ

不妊症雑誌をみて感じた事 データの見方の一例

昨年12月に、〇〇が欲しい、という不妊治療雑誌が送られてきました。2019年クリニックガイドです。

中には様々なクリニックのデータが記載されており、当クリニックと比較する意味でみていましたが、一つ気になったので、皆さんの考える参考になるかもしれないので、一面的なデータの見方ですが、考え方の一例を記載致します。

注目したのが、その実績です。

人工授精を沢山しているのと、ほとんどしていないクリニックがありますが、これはそのままで、「不妊治療全般」をおこなっているのか「ART:体外受精専門」をおこなっているのかの指標になります。これはわかりやすいクリニックの特徴の見方ですね。

次に、体外受精と顕微授精の数の比率をみると、ほとんどが顕微授精の方が多い事が分かります。これは全世界的に体外受精よりも顕微授精の方が多くなっているので、普通の事なのです。日本全体でも、およそ1/3が体外受精で、2/3が顕微授精になっています。平均はそのくらいだとお考えになって良いと思います。体外受精が顕微授精よりも多いクリニックから、99%顕微授精であるクリニックまでと、顕微授精に対する考え方がここに表れると思います。これを基準にして判断することが可能でしょう。当クリニックでもおおよそ平均くらいです。

次に、体外受精と顕微授精の合計と、凍結胚移植の数を比較すると、ざっくりですが、どの程度、胚移植できるか、キャンセルになっているかの目安(実数ではありません)が見えてきます。

体外受精と顕微授精の合計が、おおよその採卵件数です。最近は、凍結する事が多くなっており、全部を胚凍結する施設もあります。採卵周期に胚移植する新鮮胚移植がどれだけあるかが分からないので、極端ですが、100%全胚凍結をしていると仮定しますと、採卵件数と凍結胚移植数を比較する事で、どの程度胚移植できているか、採卵を試みても胚移植できないキャンセル周期がどの程度あるか、の目安が分かります。100%胚を凍結しているならば、凍結胚移植件数が、採卵件数(およそ体外受精+顕微授精数)の半分ならば、約半数がキャンセルになっているとざっくり考えられます。実際には、1回の採卵で複数の胚凍結をおこなえる事もあるので、より凍結胚移植の件数が多くなるため、約半数がキャンセルになるというのは、少なめに見積もっての事と推測されます。

一方、新鮮胚移植を多くおこなっている場合には、この推測は当たらず、凍結胚移植の比率は低くなりますので、キャンセル率が多い事を示しているわけではありません。

ちなみに、当クリニックの2017年の実績は、人工授精2000件以上、採卵件数が1627件(平均年齢39.0歳)、新鮮胚移植件数が501件(平均年齢39.7歳)、凍結胚移植件数が1782件でした。凍結胚移植数は、この冊子の中では3番目に多い実績でした。常勤医2名の施設としては結構がんばっているかな、とは、スタッフとも話をしていました。

この違いを、移植胚を厳しく選別しているのか、可能性を信じてできるだけ移植しているか、または別の考えでおこなっているかは判断はできませんが、皆さんの判断の一助にはなるのではないでしょうか。

ただ、このようにデータをしっかりと出している施設は、信頼のできる施設が多いと判断できます。私はこの冊子には今回エントリーはしませんでしたが、HPでデータを出すようにしています。また、この冊子に今回エントリーしなかった有力な施設も沢山ありますが、やはりデータを公表している施設がより信頼できる施設である、という指標は一番大きなものではないでしょうか。

なお、当クリニックの2017年のARTの臨床妊娠数は788でしたので、おそらくARTでは600人ぐらいのお子さんが生まれていると思うのです。出産された方は、できるだけご報告をお願い致します。