高橋先生のブログ

凍結胚1個の移植で、胎嚢2個の妊娠例

先日、凍結胚盤胞を1個移植して、胎嚢が2個認められて、そして卒業された方がいらっしゃいました。

胚移植1個で、双子になることは1~2%でおきます。簡単におこるものではありませんが、すごく珍しいことでもないのですね。

この「ふたご」には、大きく2つのケースに分かれます。


ひとつは、胚移植したのが1個ですので、1個が2人に分かれて妊娠、成長することです。これは1卵性の双子であり、性別も同じで、顔つきもほぼ同じになります。多くの場合には、胎嚢は一つで、一つの胎嚢の中に、胎児が2人います。胎嚢の中には、妊娠初期にはもう一つの羊膜が存在して、2人の胎児を分けている一絨毛膜二羊膜(いちじゅうもうまくにようまく)と、羊膜がなく2人の胎児を隔てる膜がないのを一絨毛膜一羊膜(いちじゅうもうまくいちようまく)といいます。1卵性双胎でも、羊膜がない一絨毛膜一羊膜では、胎児が絡まりやすく、2人とも流産となることがかなり高くなるのです。


一方、今回は、胎嚢が完全に分かれて、二絨毛膜二羊膜の可能性が高いと思います。このタイプは、初めから卵子が2個以上排卵して、それぞれ受精して、別々に着床しておこります。性別は、同じとは限らず、全く普通の兄弟と同じです。

今回は1個の移植なのに、超音波検査では、胎嚢が2個なので、超音波検査では2卵性双子であると推測されるのです。

これは不思議ではなく、起こりえる事なのです。この方は、自然周期の排卵を待っての胚移植でした。卵胞が26×22mmあり、左からの排卵を予測して、HCG注射をおこなって排卵させてました。その上で胚移植を1個おこなったのです。また、排卵時期に、性交渉もおこなっていたようです。

したがって。今回の妊娠は、凍結胚盤胞移植と、自然排卵の2個の胚がほぼ同時に着床しておきたと推測されるのですね。

実際に診療では多くのことがおこりますね。今後、順調に成長して、無事に出産されることをお祈り致します。