書籍紹介「10万個の子宮」HPVワクチンの必要性
今回、書籍をご紹介致します。
村中璃子氏(医師)著「10万個の子宮」(平凡社刊)をご紹介致します。子宮頸がんとHPVワクチンの問題を取り上げたノンフィクションで、日本人初のジョン・マドックス賞(科学誌ネイチャー主催だそうです)を受賞した書籍です。
子宮頸がんは、(ハイリスクの)ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染によりおこります。HPVワクチンはこのHPVの感染を予防するワクチンです。しかし、日本では、HPVワクチン接種後に、痙攣や不随意運動などが発症したと報告され、現在はあまりおこなわれてはいません。
実は先日、当クリニックに、進行した子宮頸がんが発見されて、手術前に早急に採卵して受精卵を保存することを希望する患者さんがおいでになりました。毎年検診を受けていたのですが、がんが分かった時にはすでに進行しており、子宮摘出が避けられない状況だったのです。検診のみでは子宮頸がんの発症や問題を解決することはできないことを認識させられる経験でした。
世界的には、HPVワクチンの安全性はWHOからも保証されており、むしろHPVワクチンを推奨していないことで、WHOから日本が非難されている状況なのです。HPVワクチンを接種しないことで、将来、多くの女性が子宮を摘出することになるのを、対策をとらないでいるのは女性の権利を侵害している、と考えられているのです。
日本産科婦人科学会でもHPVワクチン接種を推奨しているのですが、この本では、HPVワクチンを推奨していない日本の特殊性をしっかりと調査してまとめた、非常に優れた書籍です。
不妊治療に関わっている立場からも、女性の妊娠、出産の権利、可能性を守る為に、HPVワクチンが正当に使用されることを願っております。多くの方にHPVワクチンの有用性と安全性を理解して頂ける事を願って今回ご紹介致しました。