高橋先生のブログ

子宮卵管造影検査の後は避妊が必要なの?

先日、子宮卵管造影検査では、造影剤を使用するので、赤ちゃんの甲状腺への影響を避けるために、その周期には避妊した方が良い、と指示された。

との質問を受けました。造影剤の能書と、販売会社にその事について、問い合わせてみました。

結論としては、

1)リピオドールは1本10mlの油性造影剤です。検査時にしっかりとした造影像が得られて比較的正確な診断ができるとと、その後の妊娠率が比較的高いために当クリニックでは第1選択で使用しています。

造影剤にはヨードが含まれており、リピオドールは数ヶ月から1年程度、吸収されるまでに時間を要するので、その影響で赤ちゃんに、一時的に甲状腺機能低下状態になる可能性があるとされます。その頻度は、報告では、212例中5例(2.4%)程度であり、出生後の一時的な甲状腺機能低下だったようです。

しかし、これらはリピオドールを2本(20ml以上)以上使用した人がなっているようです。当クリニックでは、通常は5ml以内で済ませており、圧力を必要とする方は10ml使用しています。ごく希に、子宮筋腫などで子宮内腔が拡大している方には20ml以上使用することもありますが、その場合でも、子宮内の造影剤は膣内に流出して、体内には残らないのですね。卵管を造影する量が多くなるのではなく、子宮内の造影剤が増えるだけなので、これらはほとんどは膣内に流出するのです。


2)イソビストは、1本10mlの水溶性造影剤で、数時間で吸収されて排出されます。したがって、甲状腺に少し問題があっても使用可能です。またその後に妊娠しても、すぐに体内から排出されるのでしょう。赤ちゃんへの影響は、能書には記載されていません。一方、造影剤のが薄いので、HSGの診断は少しわかりにくくなります。その後の妊娠率はリピオドールに比較して低めです。


3)以上より、HSG検査周期の避妊は必要なく、その周期の避妊の有無で、妊娠、出産への新生児への問題には影響しないと思います。不妊治療としては、HSGをした周期はチャンスなのですね。


4)当クリニックでは、造影剤の使用量は少なく、赤ちゃんへの悪影響はほとんどないと判断しており、またその後の妊娠率は比較的高いので、主にリピオドールを使用しています。避妊は必要ありません。

一方、甲状腺に問題がある場合や、赤ちゃんへの影響が気になる方は、診断の精度が落ちる、検査後の妊娠率が多少下がるという、デメリットもありますが、イソビストを使用しても良いと思います。


5)造影剤の能書は最近の変更はないようですが、検査周期の避妊については記載はされていません。


以上、今回のHSG周期に避妊について調査してみました。




リピオドール10ml以内の場合には、気にされないで良いようですね。