自然周期と排卵刺激周期、卵子の質の改善法、着床について(ありすくらぶ交流会2011.12.17)
昨日の12月17日に患者さんの交流の場である「ありすくらぶ」の集会に参加いたしました。当クリニック卒業生がボランティアで運営して下さっています。K16ビルの3階で開催され今回は約15名もの多くの方が参加されました。高橋は診療が長引いてしまい、少し遅れての参加でしたが、高橋のその後の予定もあり、皆さんの質問に答える事で高橋の1時間すべて使い切った状況でした。
主に体外受精の治療内容に関してと、卵の質の向上への詳しい質問がありました。
その中で、3点考えさせられる事がありました。
1)自然周期の体外受精は「体に優しいのか?コストとしても安価なのか?」
自然周期の良い点としては、HMG注射を使用しないので体に優しく薬剤料が少なくてすむ、卵巣過剰刺激症候群の発生がない、毎月でもおこなうことが可能である、胚移植あたりの妊娠率は刺激周期と変わらずに高い、などが挙げられています。当クリニックでも、ご希望者や卵巣機能低下の方には自然周期での体外受精をおこなっており、妊娠・出産される方も少なくありません。
一方、自然周期での体外受精は、胚移植できるまでに、採卵できなかったり受精しないなどで半数がキャンセルになります。したがって半数の周期が無駄になっていることになります。多くの方が「体に優しい」という内容は、HMG注射を使用しないとの理由であるように感じますが、キャンセルが多い分、採卵する回数、(場合により毎日)採血や超音波をする回数、キャンセルになってもそれなりのコストがかかる、などの問題があります。過去に自然周期しか受けてない方の中には、決してコストも安くなく、通院回数も多く、またキャンセルが多いので、刺激周期をして欲しかった、との意見もありました。
他方、刺激周期では、HMG注射の費用(約5~10万程度)はかかりますが、キャンセル率は10%程度で、自己注射をするならば来院回数は自然周期よりむしろ少なくなります。凍結胚があれば、採卵回数も少なくてすみます。もし患者さんが40歳前後ならば、一人目を妊娠して出産後に2人目を希望しても、年齢的に2人目の妊娠は難しくなる可能性が高いが、凍結胚が残っていれば高齢でも再度の妊娠の可能性が高いと推測される。
実際には、確かに多すぎる卵子の採取は卵巣過剰刺激症候群になり危険なので、刺激周期でもできるだけ少ない注射量でマイルドにする方向に最近はなってきており、これはよいことだと思います。
ただ、自然周期が理想的かというと、必ずしも単純にそういえないと思います。
当クリニックでも、自然周期もおこないますが、排卵刺激周期もおこなっております。やはり1つの方法がすべての方に最も良い方法である、とは単純には考えられないと思います。それぞれの方にあった方法を考えていく必要があるでしょう。
2)卵子の質を良くする方法はどのような方法があるのでしょうか?
これは、患者さんのみでなくすべての医師も考えていることですが、なかなか難しい壁があります。
まず、妊娠しない原因のほとんどは胚の染色体異常であり、40才以上の方は採卵の時点で約50%、43才以上では70%程度は染色体異常の卵子とされています。
染色体異常自体は治療は不可能なので、残りの半数以下の染色体異常がない卵子の質をどれだけ上げられるかということになります。実際には、最も有効な卵子の質を上げる方法とは、「高年齢になる前に不妊治療をおこなうこと」とも言えるのです。
さらに、喫煙や肥満解消などの生活改善は有効と言えるでしょう。
それ以外には、血流の改善を目的に、運動、半身浴、サンビーマー(遠赤外線)、岩盤浴、などを推奨したり、メトホルミン(糖代謝改善薬)、DHEAやメラトニンなどのホルモン投与、インターパンチ(健康食品)、ビタミン剤などのサプリメント、などを使用しています。これらは、使えばすべて良くなると言う保証はないので、なかなか妊娠しない方や、卵子の質の不良な方、卵巣機能が低下して採卵数が少ない方などに提案しています。
3)妊娠しない原因としての着床障害を治療したい?
皆さんから、受精しているの「妊娠しない原因は着床障害ではないか?」とお尋ねされる事はよくあります。その場合の皆さんの考えていることは、子宮や内膜に問題があるのではないか、と考えられている方が多いようです。
しかし、着床(妊娠)しない原因は、ほとんどが胚の問題なのです。アメリカなどでの提供卵子での体外受精では、40才以上の方が20才代の方から卵子提供を受けて、夫の精子と受精させて体外受精をすると、妊娠率は20才代の妊娠率を得られます。「子宮年齢」はあまり関係しないのです。
現時点での、着床障害の検査方法としては、子宮内に子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどがあるかどうかをみたり、重症の卵管水腫がないかどうかを調べるための、子宮鏡や子宮卵管造影検査をおこなうこと程度ありませんし、現時点ではそれで十分と言えます。着床に関係する論文はありますが、現時点では機能的な着床障害の特別な検査は特になく、研究レベルの話なのです。また、繰り返しになりますが、着床しない原因のほとんどが胚の問題ないのです。
今回、たくさんの方が「ありすくらぶ」の交流会に参加されて、多くの質問がありました。
高橋は時間の問題があり、質問へのお応えのみで中座しましたが、その後皆さん同士での交流があったと思います。同じ境遇でがんばっている人がいると、人間は勇気づけられ、救われ、いやされると思います。ありすくらぶを今後も多くの方にご利用いただきたいと思います。
主に体外受精の治療内容に関してと、卵の質の向上への詳しい質問がありました。
その中で、3点考えさせられる事がありました。
1)自然周期の体外受精は「体に優しいのか?コストとしても安価なのか?」
自然周期の良い点としては、HMG注射を使用しないので体に優しく薬剤料が少なくてすむ、卵巣過剰刺激症候群の発生がない、毎月でもおこなうことが可能である、胚移植あたりの妊娠率は刺激周期と変わらずに高い、などが挙げられています。当クリニックでも、ご希望者や卵巣機能低下の方には自然周期での体外受精をおこなっており、妊娠・出産される方も少なくありません。
一方、自然周期での体外受精は、胚移植できるまでに、採卵できなかったり受精しないなどで半数がキャンセルになります。したがって半数の周期が無駄になっていることになります。多くの方が「体に優しい」という内容は、HMG注射を使用しないとの理由であるように感じますが、キャンセルが多い分、採卵する回数、(場合により毎日)採血や超音波をする回数、キャンセルになってもそれなりのコストがかかる、などの問題があります。過去に自然周期しか受けてない方の中には、決してコストも安くなく、通院回数も多く、またキャンセルが多いので、刺激周期をして欲しかった、との意見もありました。
他方、刺激周期では、HMG注射の費用(約5~10万程度)はかかりますが、キャンセル率は10%程度で、自己注射をするならば来院回数は自然周期よりむしろ少なくなります。凍結胚があれば、採卵回数も少なくてすみます。もし患者さんが40歳前後ならば、一人目を妊娠して出産後に2人目を希望しても、年齢的に2人目の妊娠は難しくなる可能性が高いが、凍結胚が残っていれば高齢でも再度の妊娠の可能性が高いと推測される。
実際には、確かに多すぎる卵子の採取は卵巣過剰刺激症候群になり危険なので、刺激周期でもできるだけ少ない注射量でマイルドにする方向に最近はなってきており、これはよいことだと思います。
ただ、自然周期が理想的かというと、必ずしも単純にそういえないと思います。
当クリニックでも、自然周期もおこないますが、排卵刺激周期もおこなっております。やはり1つの方法がすべての方に最も良い方法である、とは単純には考えられないと思います。それぞれの方にあった方法を考えていく必要があるでしょう。
2)卵子の質を良くする方法はどのような方法があるのでしょうか?
これは、患者さんのみでなくすべての医師も考えていることですが、なかなか難しい壁があります。
まず、妊娠しない原因のほとんどは胚の染色体異常であり、40才以上の方は採卵の時点で約50%、43才以上では70%程度は染色体異常の卵子とされています。
染色体異常自体は治療は不可能なので、残りの半数以下の染色体異常がない卵子の質をどれだけ上げられるかということになります。実際には、最も有効な卵子の質を上げる方法とは、「高年齢になる前に不妊治療をおこなうこと」とも言えるのです。
さらに、喫煙や肥満解消などの生活改善は有効と言えるでしょう。
それ以外には、血流の改善を目的に、運動、半身浴、サンビーマー(遠赤外線)、岩盤浴、などを推奨したり、メトホルミン(糖代謝改善薬)、DHEAやメラトニンなどのホルモン投与、インターパンチ(健康食品)、ビタミン剤などのサプリメント、などを使用しています。これらは、使えばすべて良くなると言う保証はないので、なかなか妊娠しない方や、卵子の質の不良な方、卵巣機能が低下して採卵数が少ない方などに提案しています。
3)妊娠しない原因としての着床障害を治療したい?
皆さんから、受精しているの「妊娠しない原因は着床障害ではないか?」とお尋ねされる事はよくあります。その場合の皆さんの考えていることは、子宮や内膜に問題があるのではないか、と考えられている方が多いようです。
しかし、着床(妊娠)しない原因は、ほとんどが胚の問題なのです。アメリカなどでの提供卵子での体外受精では、40才以上の方が20才代の方から卵子提供を受けて、夫の精子と受精させて体外受精をすると、妊娠率は20才代の妊娠率を得られます。「子宮年齢」はあまり関係しないのです。
現時点での、着床障害の検査方法としては、子宮内に子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどがあるかどうかをみたり、重症の卵管水腫がないかどうかを調べるための、子宮鏡や子宮卵管造影検査をおこなうこと程度ありませんし、現時点ではそれで十分と言えます。着床に関係する論文はありますが、現時点では機能的な着床障害の特別な検査は特になく、研究レベルの話なのです。また、繰り返しになりますが、着床しない原因のほとんどが胚の問題ないのです。
今回、たくさんの方が「ありすくらぶ」の交流会に参加されて、多くの質問がありました。
高橋は時間の問題があり、質問へのお応えのみで中座しましたが、その後皆さん同士での交流があったと思います。同じ境遇でがんばっている人がいると、人間は勇気づけられ、救われ、いやされると思います。ありすくらぶを今後も多くの方にご利用いただきたいと思います。