アメリカ生殖医学会(ASRM)参加報告(その3)(二重刺激法、その他)
1)卵巣機能低下症例に対する、二重刺激法とは?
O188 二重刺激法で採卵数の上昇が得られた。
卵巣機能低下症例に、マイルド刺激の初回の採卵後、採卵2日目からレトロゾールとHMG注射を投与すると、
採卵数は1回目は1.7個、2回目は3.5個だった。
生存胚はすべて凍結した。移植あたりの妊娠率は36.6%だった。
つまり、マイルド法で採卵した後の2日目よりすぐに強い排卵誘発を行うと、採卵時には小さな卵胞であったものが、おおきくなって、また採卵できるというものです。
例えば、AMH<0.1の方で、採卵時に1cm未満の小さな卵胞が数個あったならば、続けてHMG注射をすることで、それらが大きくなって、より多くの採卵ができるかもしれませんね。
早速、当クリニックでもおこなってみましょう。ただし、対象は、卵巣機能が低くて、採卵時に小さな卵胞がある場合ですね。
2)メトフォルミンが効果ない方には、ジャヌビア(インクレチン)という、新しい糖尿病薬を使用すると、効果があるかも。
O187 メトフォルミンの効果が無い患者にsitagliptinは卵胞発育、妊娠率の上昇を来す。薬品名としては、ジャヌビアという薬があります。Ⅱ型糖尿病の方にのみ使用します。低血糖はおこしにくいようですね。
3)排卵刺激をしても、染色体異常の胚が増えるわけではない。
O121 自然周期と刺激周期のIVFで、胚の異数性の染色体の差異は認めない。
35~37歳では 異数体染色体異常は約38%
41~42歳では 71~89%
43歳以上では 84~91%
むしろ排卵誘発をおこなった方が、異数染色体異常の割合は少なかった。「自然周期の方が染色体が正常な卵子が多い」とは言えない、ということだと思います。
ただ、この報告でも、40歳以上の方の胚は、8割~9割が染色体異常だったようですね。やはり年齢が最も重要な因子でしょうか。
他にも様々な報告があり、いくつか当クリニックでも試してみたいと思います。外来でも提案させて頂きます。