高橋先生のブログ

卵管切除側の排卵で妊娠した例がありました!

この間、診療とは直接には関係ない用事がたてこみ、2週間ぶりのブログとなりました。
今年最後の3連休(私には2連休でしたが、、)は皆さんは楽しまれましたか?

今回、卵管切除側の排卵で自然妊娠された方がいらっしゃいましたので、ご紹介致します。
20歳代後半の方で、子宮が妊娠で左の卵管を切除されていました。
卵管造影検査で、右卵管の開通と、左卵管切除を確認しています。
クロミフェンで排卵誘発をしていましたが、左の排卵であったので、通常通りに交渉をもって頂いていました。
生理が来たら体外受精を予定していたのですが、生理が来ないと言うことで来院されたところ、子宮内に妊娠されて、胎嚢も認めました。

皆さん、卵管が切除されていても、反対側の卵管で卵か拾われて、妊娠することは珍しいと思っていませんか?
実は私も、その可能性はせいぜい5%程度だと思っていました。
しかし、今回、調べてみると、最近のデータではもっと多いことが報告されています。

子宮外妊娠などで片側の卵管を摘出した場合、卵巣は残ります。この卵巣から排卵した場合に反対側の卵管で卵子をキャッチする確率はどの程度でしょうか。
この論文では、約1/3の確率で反対側の卵管が卵子をキャッチすることを示しています。

Hum Reprod 2013, 28: 937 (advance access published feb 3, 2013)
1999年~2010年のカルテの記録を検討。子宮外妊娠により片側の卵管摘出術を受け、その後自然妊娠が成立した707名のべ842妊娠を対象。
超音波所見から黄体(排卵後にできる卵巣の変化)が左右どちらにあったかを卵管摘出した同側と対側で調べたところ、摘出側で31.6%(266/842)でした。正常妊娠(32.0%, 246/769)と子宮外妊娠(28.8%, 21/73)の場合の摘出側の比率に有意差は認めませんでした。

皆さんの説明の絵では、卵管が子宮の左右反対に描かれていることが多いと思います。
しかし、実際には、卵巣と卵管は左右とも子宮の裏側に、近くに存在していますから、左右の卵管は非常に近い位置にあります。
片側の卵管摘出や、片側の卵管閉塞の場合には、そちら側の排卵を無駄なものと考えてしまいがちですが、この論文では決して無駄ではなく、妊娠の可能性が十分あることを示しています。