高橋先生のブログ

人工授精の威力 3例

年末年始は体外受精もお休みになるのですが、この年末年始の間に、人工授精の威力を感じた症例が続きましので、ご紹介致します。

1)30歳台後半、AMH<0.1、FSH:25と卵巣機能は低下。
過去に6回の採卵。 初回に妊娠するも妊娠7週で流産。その後の5回の採卵、4回の胚移植では妊娠せず。毎回1~2個の採卵数。(2回は顕微授精だった)
今回7回目の採卵時に、すでに排卵してしまっていたのでAIHに変更し、このAIHで妊娠。7週まで進み心拍あり。
AIH時の原液精子は、1ml 3900万/ml 運動率13%  総運動精子数;500万

体外受精に進んでいても、またAMH<0.1でも、人工授精で妊娠する可能性はあるのです。一般不妊治療での妊娠の可能性も併せて追求して、HSGなどもおこなっておくことの大切さを再確認しました。


2)30歳代前半、AMH<0.1 FSH;29と卵巣機能は低下。
体外受精1回目は、変性卵1個のみで中止。2回目は採卵できず。3回目に1個採卵し、1個のみ胚移植できるも妊娠せず。卵巣機能が非常に低下しており、採卵さえ難しい状況での妊娠です。
今回、プレマリンを使用しつつ、月経64日目に23×19mmの卵胞が発育し、65日目にAIHをおこない、妊娠し、胎嚢を確認。
体重はマックスより3kg減量。インスリン抵抗性があり、メトグルコも使用。体重の管理も重要なのです。

月経後60日以上経ってやっとできた卵胞では、体外受精をおこなうには勇気はいりますが、諦めずにAIHをおこなうことも、決して無駄とは言えないですね。もちろんHSGはおこなっていますよ。


3)30歳代後半、AMH;13 多嚢胞性卵巣症候群。
 前医で5回の採卵、10回の胚移植するも妊娠せず。この間すべて顕微授精だったとのこと。
 当クリニックでも翌月にIVFの予定でしたが、HSG後の1回目にAIHで妊娠し、胎嚢を確認。
 この方にとっても初めてのAIHでした。
 AIH時の原液精子は、4.1ml 340万/ml 運動率41% 総運動精子数 574万と、一般的には人工授精での妊娠は難しいとされるのですが、実際には線引きは難しいのですね。無精子症でない限り、人工授精に挑戦してみては如何でしょうか。  
 夫は睾丸腫瘍で、抗癌剤の使用経験あり。

 前医の5回の顕微授精でも妊娠せず、精子の状態も良くなかったのですが、1回目のAIHで妊娠し、御本人も信じられないとの事でした。

皆さん、如何ですか。人工授精も捨てたものではありませんね。
体外受精をおこなっていても、その合間に人工授精をすることも、無駄ではないのです。
少しでも妊娠する可能性を上げるために、総合的に考えて不妊治療を考えみては如何でしょうか。