高橋先生のブログ

生殖医療ジャーナルクラブ2015報告(その2)理想の採卵数とは?

生殖医療ジャーナルクラブ報告第2弾です。

1)しばしば皆さんから、理想の採卵数について尋ねられますが、その論文がありました。
採卵数と生児出産率、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)との兼ね合いをみた報告です。
 一般的には採卵数が多い方が良いのですが、多すぎても出産率は頭打ちになってしまいます。

   採卵数      生児出産率    OHSS
       1~5個             17%           0.09%
   6~10個             31.7          0.37
   11~15個        39.3          0.93
   16~20個       42.7             1.67
   21~25個       43.8            3.03
   26個以上       41.8            6.34

これから、  15個ぐらいまでの採卵数が適当である としています。Fer Steri 2014;101:967-973

採卵巣5個までは、確かに出産率は低いので、5個以上を目指した方が良さそうです。
一方、16個以上は出産率は、もう上昇しませんが、OHSSはどんどん増えていきます。
したがって、5個以上15個(せいぜい20個)が理想的な採卵数と言えるでしょう。
15個以上の採卵数の場合には、多くの場合、多嚢胞性卵巣症候群(PCO)の方である可能性が高くなります。
セミナーに参加した先生方にも尋ねてみましたが、やはりPCOの方は、卵子の数は採れるのですが、卵子の質が良くないことが多く、皆さん苦労されているようでした。
当クリニックでも、特にPCOの方には、今後マイルド~中等度の誘発で、5~15個の採卵数を目指していきましょう。
                     

2) 卵管水腫硬化療法                                                                        

重症の卵管水腫があると、体外受精でも妊娠率は1/2~1/3に低下し、流産率は2倍になります。したがって、超音波検査で分かるような重症の卵管水腫がある場合には、手術をして、卵管水腫を切除したり、切断したりすることが、しばしばおこなわれます。一方、癒着がひどく手術が難しい場合や、手術をしたくない方には、採卵時などに卵管水腫を吸引する方法がおこなわれます。
これは、簡単に行えて安価であるのですが、再発が欠点でした。
今回、この卵管水腫に、単に吸引するだけでなく、アルコール固定をすると、およそ8割で再発なく、妊娠率も改善したとの報告です。

                           着床率  臨床的妊娠率  生児出産率
卵管留水腫群               8.8            16                  10 %
(処置しなかった群)

硬化療法群(処置群)      26        43        34

再発群               25        39        28

コントロール群             30        50        39
 (卵管水腫なし)  


卵管水腫硬化療法
 月経7~12日(排卵前)
 ゲンタマイシン80mg溶液で反復洗浄
 卵管水腫の1/2の内容液量の98%エタノール注入し、5~10分待つ
 2週間後に卵管水腫の大きさが10m%未満ならば、有効であったと判断。
 再発率は22%    月経2回目以降に体外受精をおこなう。
              Am J OB Gyn 2014 3:250e1-250e5

この方法は、再発しても、それなりの効果があるようで、再発群でも妊娠率は改善し、処置群に近いぐらい妊娠しています。したがって、積極的におこなって良い方法だと思います。
当クリニックでも先日、おこなってみました。方法としては、チョコレート嚢腫におこなっていたので、特に難しい問題はなく、スムーズにおこなえました。今後も必要な方には積極的におこなってみます。成績が出たならばまたご紹介致します。