高橋先生のブログ

生殖医療ジャーナルクラブ2015報告(その4)

生殖ジャーナルクラブ報告 その4 最終号です。

1)最近、AMH<0.1の方が非常に多くなっているのですが、皆さん、「低反応の卵巣]をどのようにお考えですか。 ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)では、卵巣の低反応の定義があります。

 低卵巣反応のBologna criteria(ボローニャ定義) 2011年

下記の3項目のうち、2項目以上の場合には低反応卵巣とした。

1)40歳以上か、その他のリスクを持つ

2)(採卵が)低反応でキャンセルとなったか、採卵数が3個以下であった

3)月経期の胞状卵胞が5~7個未満、またはAMHが0.5~1.1未満のもの

                (当クリニックでは胞状卵胞5個未満、AMH1.0未満を目安と考えています)

                                                     Hum Reprod 2014;29:1842-1845

 

2) サプリメントとして、ビタミンCをとると、BMIが25未満の女性において、妊娠までの期間が短縮した。  (当クリニックでは、ビタミンDとビタミンCを積極的に検査していますが、ビタミンCも低い方は積極的にとっていきましょう) 

BMIが25以上の女性では、βカロテンを摂取することで妊娠までの期間が短縮した。

 

3)  子宮内膜症の取り扱いガイドライン(ESHRE)

ESHREの内膜症のガイドラインの抜粋です。          Hum Repro 2014;29:400-412

・軽度の内膜症があるカップルには、HMG-AIH療法により、自然妊娠よりも5.6倍妊娠率が上昇する。(子宮内膜の方には、クロミッドによる妊娠率の増加はわずかであり、有効性は明確ではないようです)

・HMG-AIH療法は、AIH単独よりも妊娠率は5.1倍上昇する。 (やはり内膜症には、HMG-AIHが良いようですね)

・内膜症患者にARTをおこなう前に、3~6ヶ月GnRHアゴニスト(ナファレリール、ブセレキュア、リュープリン)を使用すると、妊娠率が上昇する。(内膜症患者さんで、なかなか妊娠しない方には、ナファレニールなどを使用しても良さそうですね)

・3cm以上のチョコレート嚢腫を、ART前に手術することで妊娠率が上昇する根拠はない。しかし、手術することで、疼痛軽減や採卵しやすくなることは認められる。

 

4)PCOSについて

 AMHで、PCOを考える目安は、4.7~7ng/ml位 (当クリニックでは5を目安としています)

 PCOSには、クロミフェンよりレトロゾールの方が、1.32(IUI併用)、1.71(IUI併用ナシ)と妊娠率向上した。生児獲得率は1.63

しかし、PCOの第一選択は、クロミフェンである。(レトロゾールは、乳癌治療薬であり、第一選択にはなりにくいですね)


さて、今年は、じっこうの年と位置づけました。まずは、しっかりと報告をやりきりましたよ~。これらの勉強の成果をしっかりと治療に応用していきたいと思います。