高橋先生のブログ

他院で7回胚移植後、当院で初回の体外受精で妊娠した方の出産報告

他院で3回採卵し、7回胚移植したものの妊娠せず、当クリニックにいらした方が、当クリニックの初回の体外受精で妊娠、出産された方からの出産報告の葉書が届きました。
たまたま妊娠された可能性もあるのですが、やはりこの様な葉書を受け取るとうれしくなります。
改めて、何か皆さんの参考になる要素がないかを見るために、カルテを取り寄せて見直してみました。

この方は、30歳代後半の方で、AMHは1.31と、40~41才相当の卵巣年齢でした。
反復不成功の方には、当クリニックでは様々な方法を試みることにしています。
基本的なこととしては、子宮鏡とビタミンDを検査しました。
すると子宮鏡では、写真の如く、子宮内膜ポリープが見つかったのです。また、ビタミンDも19.4と、20未満の、ビタミンD欠乏状態だったのです。



また、それ以外には、DHEAsも113と低い値であり、特殊ですが8OHdGでの酸化ストレスでは強度のDNAダメージを示していました。
この対策としては、
1)子宮内膜ポリープ切除術を日帰りでおこないました。
2)DHEAと、マルチビタミン(アシストワン)を3ヶ月前から使用しました。
3)排卵誘発は、前医でも胚盤胞が十分できていたので、同様なHMG-アンタゴニスト法を採用しまし、採卵数は17個と十分な卵子を採取できました。(以前の方法をすべて否定する必要はないのです)
4)胚移植は、2段階移植を採用しました。また、余剰胚盤胞も2個保存することが可能でした。

今回の方法では、最も重要であったのは、子宮鏡検査とポリープ切除術だったと思います。
最近は、多くの方が「着床障害」について気にされていますが、
①着床(妊娠)するかどうかは、卵子の質が最も大きな問題であり、
②着床障害の最も重要な検査は子宮鏡などで、ポリープや粘膜下筋腫、子宮内腔癒着がないことを確認することなのです。
③血液凝固能や免疫の影響による着床障害は、明確な原因としては一般的には未だ認められていませんし、原因があったとしてもそれほど多くはないのです。

次に、今回採用した、子宮鏡検査以外の効果は議論があり、明確な効果を示さないものもあります。
しかし、一番大事なポリープ手術をおこなった上で、卵子の質の改善を期待するならば、サプリメントや、2段階移植も意味はあると考えています。

基本的な対策をとらずに、DHEAやサプリメントのみを使用することはあまりお勧めしません。
反復不成功の方には、しっかりと再評価をした上で、基本的(つまり大切)なことをおさえた上で、様々な方法を試してみる事が良いでしょう。