高橋先生のブログ

卵管水腫硬化療法後の、凍結胚移植での心拍確認例

先日、重症の卵管水腫があった方に、卵管水腫硬化療法をおこない、その後の凍結胚盤胞移植で心拍を確認できた例がありましたので、ご紹介致します。
30歳代前半の方で、左卵管水腫、右卵管周囲癒着があり、体外受精となりました。
左卵管水腫は3cm×2cmであり、超音波検査でも確認される重症の卵管水腫でした。
採卵周期では3個の胚盤胞が得られました。
1回目は妊娠せず、2回目は妊娠するもごく早期の流産に終わりました。
御本人と相談し、卵管水腫硬化療法を行うこととなりました。
卵管水腫の内容液を吸引後、アルコールを注入し10分間維持して卵管水腫を固定しました。
その後は、卵管水腫は徐々に縮小し、最後の胚の移植時には超音波検査では確認できないまでになりました。
この凍結胚盤胞胚移植で妊娠し、先日胎児心拍が確認されたのです。

この例では、
1)超音波検査でみえる卵管水腫は重症の卵管水腫と考えられる。
2)重症の卵管水腫があると、体外受精でも妊娠率(着床率)が、1/2~1/3に低下する。
3)卵管水腫を解除するには、腹腔鏡手術での卵管切除、卵管水腫開口術、卵管切断、卵管クリッピング、などがある。
4)最近では、腹腔鏡手術の代わりに、卵管硬化療法が報告されている。ただし、根本的な治療ではなく、あくまで代替療法であり再発例もある。しかし、腹腔鏡手術が困難な例などには十分考慮に値する治療法である。
などが、言えると思います。
また、最近、漠然とした着床障害が気になる方からしばしば質問されるのですが、着床障害の検査としては、子宮鏡による子宮内膜ポリ-プや粘膜下筋腫、子宮内膜癒着などの確認や、子宮卵管造影検査や超音波での重症の卵管水腫の確認が重要なのですね。