高橋先生のブログ

不育症Up to Dateシリーズ(2)

不育症シリーズ その2 です。

リスク別の治療法(総論:概略)
<おことわり>
「産科と婦人科」2016年5月号を参考にしてますが、この雑誌も産婦人科学界全体の意見ではなく、また、このブログでは、私なりの勝手な解釈で説明していますことをご了解下さい。

1.子宮形態異常
中隔子宮や双角子宮・単角子宮は、流産率が高くなる。
双角子宮・単角子宮の流産率はおよそ50%ですが、一般的には手術の対象ではありません。半数は出産までいくので、そのままで妊娠に突き進むことになります。
中隔子宮も流産率が上がりますが、中隔の程度にもよるでしょう。子宮中隔は流産防止目的に手術することはありますが、一般的に不妊症の原因ではないので、不妊症の治療目的に中隔の手術をするものではありません。したがってまた、流産を一度も経験していないのに、中隔の手術をおこなうのは、習慣流産予防なのか(不妊症治療目的なのか)を混同せずに、明確に分ける必要があります。
中隔手術は、現在は子宮鏡下手術が主流でしょう。高橋ウイメンズクリニックでも、日帰りで子宮中隔手術をおこなっています。今でも年間数例ずつおこなっており、その後の出産も通常とかわらずにおこなわれることが多いです。

2.甲状腺機能異常
明らかな甲状腺機能異常は、内科を紹介し治療。
潜在性甲状腺機能低下では、チラジンSを処方しますが、このでの著者は、うつ症状が改善したとの印象もあるようです。

3.染色体機能異常
染色体異常は治療できから、との理由で、染色体検査を受けない方も少なくありませんが、不育症の検査では、染色体検査は基本液な検査にあげられます。
常染色体(性染色体以外)は1対(2本)ありますが、染色体異常があっても、2本両方の染色体が異常ではなく、一般的には片方の染色体異常で、もう一方は正常な染色体なのです。
染色体の構造異常をもつカップルの80%が最終的にお子さんを得られているとの報告もあります。
一方、ほとんど流産となるロバートソン転座もあるので、染色体分析も重要な検査の一つです。

4.抗リン脂質抗体陽性
抗リン脂質抗体症候群と判断するためには、12週間あけて、2回以上、陽性である必要があります。偶然の陽性も良くあります。1回で判断をするのは早計です。
2回とも抗リン脂質抗体が陽性の不育症患者さんには、低用量アスピリンやヘパリン注射を妊娠初期からおこなうと、流産率がおよそ1/4に低下する可能性があります。(胎盤の血管の詰まりを予防する目的)
一方、抗リン脂質抗体が陽性でも、必ずしも流産するものではありませんので、治療対象者は、不育症患者さんです。1回も流産していない方に、アスピリン(副作用はほとんどないのでアスピリン程度はしばしば用いられます)やヘパリン注射はやり過ぎかもしれませんね。

5.プロテインS欠乏症
プロテインS欠乏症の治療法は、実際には確立されていません。
まずは検査のばらつきもあり、正常値も検査会社により異なり、再検査すると正常値と異常値が変化することは良くあります。
これも2回以上の検査が必要と私は考えていますが、確認検査をすべきかどうかの基準もありません。
無治療では、生児獲得率が11%、治療群では71%であったとの報告があり、やはり治療をおこなった方がよいとの判断です。
治療法としては、低用量アスピリンと、低用量アスピリン+ヘパリン注射とで効果は、同じであったとの報告があり、著者は、低用量アスピリンで十分であろう、としています。

6.原因不明例
不安の強い方は流産率が高くなります。
したがって、原因が明確でないかたには、不安や焦り、お話をよく聞いてあげて、不安を少なくするよことで、流産率が下がると報告されています。テンダーラビングケア(tender loving care)
流産の不安が強い方は、不育症の検査を受けた方が不安が少なくなる方も多いようです。悩んでいるよりも検査を受けることも、ふあんを下げる方法かもしれませんね。
また、 当クリニックでは、臨床心理士の小倉さんがいますので、カウンセリングを利用しては如何でしょうか。

7.治療をおこなっても流産となった場合
保険外ですが、絨毛染色体分析(赤ちゃんの染色体)をおこなって、胎児の染色体異常があったかどうかで、治療の変更も考慮するとのことです。(ただし、費用は約3~5万円ぐらいです)

今後は、各論で一つずつもう少し詳しく読んで皆さんにお伝えしていきたいと思います。(続けられるかな~ がんばります!)