高橋先生のブログ

不育症Up to Dateシリーズ(3)

不育症シリーズ(3)です。
「産科と婦人科」2016年5月号を参考にしてますが、このブログでは、私なりの勝手な解釈で説明していますことをご了解下さい。

染色体異常

 均衡型染色体異常(染色体の一部が入れ替わる)のカップルが、お子さんを得られる確率は63%、染色体正常カップルは72%であった。
均衡型染色体異常があっても、約2/3はお子さんを得られるようです。


着床前診断(PGD)

セントマザー産婦人科医院からの貴重なデータです。反復流産のある均衡型転座の染色体異常のあるカップル126組で、PGD74組、52組は自然妊娠  を希望しました。

             PGD群      自然妊娠群
初回生産率    38%(14/37)    54%(28/52)  むしろ自然妊娠の方が赤ちゃんを
                                     得られる率が高め  
累積生児獲得率  68%(25/37)        65%(34/52)         最終的に赤ちゃんを得られる率は同じ

生児を得るまでの  0.24回      0.58回      PGDでは、流産の可能性が半分になる印象
流産回数                            ただし、流産がなくなるのではない

妊娠までの期間    12.4ヶ月    11.4ヶ月     PGDで妊娠しやすくなるわけではない

妊娠しない割合   19%(7/37)   4%(2/52)    不育症カップルに、PGD(つまり体外受精を                                                      
                                おこなう)ことで妊娠しやすくなるわけではない

PGDの費用      平均約96万円

 結論として、PGDでは、その後の流産を半分程度に減少させたが、赤ちゃんを得られる確率を上げない、との報告でした。
また、PGDでは、胚から一部の割球をはぎ取ってくるので、体外受精の妊娠率をむしろ低下させる可能があることも記載されていました。これは、以前に私のブログでも大阪のIVFのクリニックからの報告でも紹介致しました。

流産の最も多いのは、偶然おきた胎児の染色体異常です。流産回数が多くなるにつれて胎児の染色体異常の率は低下する(つまり不育症の原因による流産の割合が増える)のですが、2~4回流産したカップルでも、胎児の染色体異常は50%以上でした。
流産胎児の絨毛検査をして、その流産が胎児の染色体異常であった場合には、その次の妊娠では、62%で妊娠は継続するようです。(胎児染色体異常があれば、何もしなくても2/3はうまくいくと言うことでしょう) 一方、産胎児に染色体異常がなかった場合の、次の妊娠の継続率は38%だった。次回のり流産の可能性を推測するための、絨毛染色体検査の意義もありそうですね。
 
不育症に対する着床前スクリーニング(PGS)
胚の染色体をすべて調べて、正常な胚を移植するのですが、2015年4月に日本産婦人科学会が臨床研究を開始することを決定しましたが、まだ実際にはほとんど進んでいないようです。
 学界で認められるのは、まだまだ先の話になりそうです。