生殖医療従事者講習会参加報告(2016.12)その2 生殖遺伝 編
生殖医療専門医、講習会 報告その2 (着床前診断)
Ⅱ)生殖遺伝 編
着床前診断に関する講習が多くを占めました。
ある不妊治療専門クリニックが、国内では一般患者に行うことができないはずの「着床前遺伝子スクリーニング(受精卵検査、PGS)」を行っていたため、日本生殖医学会は11月に、院長の生殖医療専門医資格を取り消す決定をしました。
現状では、まだ一般患者に着床前遺伝子スクリーニング(PGS)は認められていないのに、一部施設で行われていることへの危機感からか、今回再確認の意味もあって、講習された面もあるでしょう。
「着床前診断」の日本産婦人科学会の見解(H27年6月改訂)
・適応:
原則として重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある、遺伝子変異ならびに染色体異常を補因する場合
但し、均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産(反復流産を含む)も対象。
・PGS(スクリーニング)の禁止:
診断する遺伝情報は、疾患の発症に関わる遺伝子・染色体の遺伝学的情報に限られ、スクリーニングを目的としない。目的以外の診断情報については原則として解析または開示しない。
つまり、現状ではお二人のどちらかに、遺伝子変異か染色体異常がない場合には、着床前診断をしてはいけない、というのが、医学会の指針です。
PGSスクリーニングは、まだ、明確に禁止されている、のですね。
ただし、学会は何もしているのではなく 、高齢の方へのスクリーニングが有用かどうかの治験を進めているところです。少しでも早期に結果が出ることを皆望んでいますが、今は学会のルールを遵守する必要があるのですね。
なお、着床前診断を行うには、遺伝専門医によるカウンセリングが必須なのです。
PGD(着床前診断)
検査対象:特定の遺伝子変異
特定の染色体不均衡型構造異常
対象者 :遺伝病(単一遺伝子病)
染色体転座保因者の習慣流産
検査目的:特定の遺伝病の罹患卵や特定の不均衡型の染色体転座卵を除くため
PGS(着床前スクリーニング)
検査対象:全染色体の異数性(数的異常)
対象者:基本的に不特定(年齢や習慣流産を想定)
検査目的:すべての染色体の異数性(数的異常卵)を除くため
検査方法は、最近は、マイクロアレイ法から、次世代シーケンサーに移行しつつあります。
これで、かなり感度の向上と、スピードアップが出来るようになっているそうです。
ただし、問題点としては、感度が良すぎるために、微少の染色体の欠失や過剰が見つかったときに、それが問題なのかどうかがまだ分かっていないので、どうするかが決まっていないそうです。
また、胚には、モザイクの細胞がかなり混ざっているので、そのまま正常の子供が生まれることは良くあるのですが、モザイクが見つかったとき(30~70%に認めると報告されています)に、一概に異常とは言えず、正常に生まれる胚も異常として良いのかが決まっていないようです。
PGS(着床前スクリーニング)は、これまでは
・通常の不妊患者にPGSを実施する有用性は示されていない。
・高齢不妊女性、受精障害、着床障害、習慣流産では、有用かもしれない。
・4~8細胞からのFISH法では診断精度に限界がある。
というまとめのようです。
最近のPGSでは、
・マイクロアレイ法で、胚盤胞を使用しておこなうと、妊娠率が20%程度上昇する。
(0%が100%になるのではありません)
・マイクロアレイ法よりも、次世代シ-ケンサーでは5%程度妊娠率が上昇する。流産率は、共に2%程度と、流産はかなり減るようです。
Ⅱ)生殖遺伝 編
着床前診断に関する講習が多くを占めました。
ある不妊治療専門クリニックが、国内では一般患者に行うことができないはずの「着床前遺伝子スクリーニング(受精卵検査、PGS)」を行っていたため、日本生殖医学会は11月に、院長の生殖医療専門医資格を取り消す決定をしました。
現状では、まだ一般患者に着床前遺伝子スクリーニング(PGS)は認められていないのに、一部施設で行われていることへの危機感からか、今回再確認の意味もあって、講習された面もあるでしょう。
「着床前診断」の日本産婦人科学会の見解(H27年6月改訂)
・適応:
原則として重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある、遺伝子変異ならびに染色体異常を補因する場合
但し、均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産(反復流産を含む)も対象。
・PGS(スクリーニング)の禁止:
診断する遺伝情報は、疾患の発症に関わる遺伝子・染色体の遺伝学的情報に限られ、スクリーニングを目的としない。目的以外の診断情報については原則として解析または開示しない。
つまり、現状ではお二人のどちらかに、遺伝子変異か染色体異常がない場合には、着床前診断をしてはいけない、というのが、医学会の指針です。
PGSスクリーニングは、まだ、明確に禁止されている、のですね。
ただし、学会は何もしているのではなく 、高齢の方へのスクリーニングが有用かどうかの治験を進めているところです。少しでも早期に結果が出ることを皆望んでいますが、今は学会のルールを遵守する必要があるのですね。
なお、着床前診断を行うには、遺伝専門医によるカウンセリングが必須なのです。
PGD(着床前診断)
検査対象:特定の遺伝子変異
特定の染色体不均衡型構造異常
対象者 :遺伝病(単一遺伝子病)
染色体転座保因者の習慣流産
検査目的:特定の遺伝病の罹患卵や特定の不均衡型の染色体転座卵を除くため
PGS(着床前スクリーニング)
検査対象:全染色体の異数性(数的異常)
対象者:基本的に不特定(年齢や習慣流産を想定)
検査目的:すべての染色体の異数性(数的異常卵)を除くため
検査方法は、最近は、マイクロアレイ法から、次世代シーケンサーに移行しつつあります。
これで、かなり感度の向上と、スピードアップが出来るようになっているそうです。
ただし、問題点としては、感度が良すぎるために、微少の染色体の欠失や過剰が見つかったときに、それが問題なのかどうかがまだ分かっていないので、どうするかが決まっていないそうです。
また、胚には、モザイクの細胞がかなり混ざっているので、そのまま正常の子供が生まれることは良くあるのですが、モザイクが見つかったとき(30~70%に認めると報告されています)に、一概に異常とは言えず、正常に生まれる胚も異常として良いのかが決まっていないようです。
PGS(着床前スクリーニング)は、これまでは
・通常の不妊患者にPGSを実施する有用性は示されていない。
・高齢不妊女性、受精障害、着床障害、習慣流産では、有用かもしれない。
・4~8細胞からのFISH法では診断精度に限界がある。
というまとめのようです。
最近のPGSでは、
・マイクロアレイ法で、胚盤胞を使用しておこなうと、妊娠率が20%程度上昇する。
(0%が100%になるのではありません)
・マイクロアレイ法よりも、次世代シ-ケンサーでは5%程度妊娠率が上昇する。流産率は、共に2%程度と、流産はかなり減るようです。