高橋先生のブログ

抗精子抗体検査のばらつき(不確実性)

皆さん、抗精子抗体(精子不動化抗体)の検査を、けっこう確実なものとお考えではないでしょうか。
実は、そうでもないことが時々あるのです。その1例を経験しましたのでご紹介致します。

ちなみに、 抗精子抗体(精子不動化抗体)は、女性が持っていると、子宮内に入ってきた精子の動きを止めてしまい、妊娠が困難になってしますのです。人工授精でもなかなな妊娠しないことが多いのです。抗精子抗体には様々な種類があります。この中で、最も不妊症に関わっているのが精子不動化抗体なのです。

30歳代後半の方でしたが、抗精子抗体を測定したところ、(+) SIV値=6.4という値でした。
当クリニックでは、SIV値が陽性の場合には、確認検査として、別の検査会社に、精子不動化抗体の抗体価を測定するために再検査を依頼しています。

その値はSI50値で陰性でした。これは抗体価が低いときに時々おこることなのです。抗体は上下していますから、あるときは陽性、あるときは陰性ということがあり得るのです。
そのため、再度、今後はSIV値と、SI50値を両方とも検査に出しました。その結果は、驚くことに、SIV値は陰性、SI50値=1.7と陽性でした。

つまり               1回目検査  2回目 3回目

抗精子抗体(SIV)         陽性          陰性
  
精子不動化抗体価(SI50)           陰性   1.7(陽性)

という結果だったのです。このように、抗精子抗体の検査でも、検査の時期が異なると結果がばらつくことがあり得ます。結果に疑問がある場合には、再検査をしてみることも考えてもよいかもしれません。医療での検査とは、このように、普遍的でも確実でもなく、データは動くことを再認識されますね。


なお、抗精子抗体(SIV)は、実際には、陽性か陰性かを確認する検査です。SIV検査で、強陽性との結果がありますが、これは実際には精子不動化抗体の強さを示しているのではありません。精子不動化抗体の強さを見るには、SI50値を測定することが必要なのです。
今回のSI50値=1.7はかなり低い抗体価であり、自然妊娠する可能性も十分あります。
SI50が10以上は、高抗体価とされ、自然妊娠が難しく、体外受精が勧められます。10未満の場合には、タイミングやAIHも併用しても良いでしょう。
過去には、精子不動化抗体陽性も,自然妊娠されている方が、このブログでも4~5人ご紹介しています。皆さんがんばっていきましょうね。