抗精子抗体(精子不動化抗体)陽性でのAIH妊娠例
29才、抗精子抗体陽性でのAIHで2回妊娠された方をご紹介します。妊娠歴なし。
一般検査で、抗精子抗体が陽性でした。
抗精子抗体には様々なありますが、最も妊娠と関係するとされるのは、精子不動化抗体です。
通常はスクリーニングとして、SIV値を測定します。これは単に、プラスかマイナスと考えて下さい。
SIV値は抗体の高さ・強さを示しているのではありません。この方は2回測定(間隔は1ヶ月)して、SIV値(≦1.4)は、6.42(単に+)と96.97(強陽性)との結果でした。
一方、抗体の強さは、SI50と言う検査法で測定します。2回のSI50値 (<1.0)は、1.0未満(陰性)と、1.7(弱陽性)です。(SI50の強陽性とは5~7以上)
SIV値で強陽性という結果が出るのですが、抗体が強いのではないのですね。実際には、この方の精子不動化抗体は弱陽性であり、抗体価は上下しますので、時には陰性と判断される程度なのです。したがって、SIV値が陽性ならば、SI50で抗体の強さを確認する必要があるのですね。
この方は、SI50が低かったので、自然妊娠の可能性もあると考え、タイミングと人工授精を提案しました
4回目のAIHで妊娠しました。これは子宮外妊娠の可能性があり、経過観察のみで流産。
そして、次の周期のAIHで妊娠して、卒業、出産となりました。
SIV値はプラスかマイナスの結果のみであり、抗体はある程度上下するので、1回の検査で絶対に間違いがない、とは考えないようにして下さい。