高橋先生のブログ

タクロリムス(免疫抑制剤)と妊娠について

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私は、以前から合併症妊娠にも興味があり、虎の門病院勤務時には、膠原病と妊娠に関しては比較的勉強をしていました。

今回、最近の膠原病の知識のアップデートの意味もあり、今月出版されたばかりの、この本「膠原病をスッキリまとめました」を読んでみました。

その中に、2018年にタクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリンの免疫抑制剤が、妊娠中禁忌(使用禁止)から、有益性投与(使うメリットが、危険性よりも上回ると考えられるならば使用して良い)に、変更された事が記載されていました。これらは、明らかな催奇形性(赤ちゃんに増える)や胎児毒性を示す報告がなく、妊娠中でも有益性投与が認められるようになったと記載されています。

タクロリムスが妊娠中も使用可能になった事は、以前に当クリニックからも皆様にご説明致していました。当クリニックでは、反復着床障害の方に、TH1/TH2の免疫機能を検査して、免疫機能が高い方には、胚移植時にタクロリムスを使用するようにしています。拒絶反応を弱めて妊娠しやすくなる事を期待しているのです。

しかし、これで妊娠された方から、タクロリムスをいつまで使用したら良いかの質問がありました。

できれば、出産間近まで使用して頂きたいのですが、SLEやリューマチなどの膠原病でない方に、妊娠中に免疫抑制剤を使用する事の理解を参加担当の先生に得るのは、簡単ではないのです。

産婦人科以外の他科の先生方も、症状もないし、病気でもない方にタクロリムスを使用することは、避けたいと考えると思います。

しかし、今回、このように書籍として、タクロリムスは妊娠中も使用可能であると期さして下さったことはとても有り難いですね。少なくとも催奇形性の増加はなく、厚労省も妊娠中の使用禁止をしていないと、明確になったのですから。