高橋先生のブログ

妊婦血液の出生前診断

妊婦血液の出生前診断(新型)
本日、妊婦血液で、ダウン症などの染色体異常(数的異常)を99%の確率で診断できる検査方法が、臨床応用されるにあたっての報道がありました。
対象は、妊娠10週以降の方であり、おもに妊娠7週で転院する当クリニックでは直接関わる可能性は低いですが、様々な注意点があると思うので、コメント致します。

まず最初に注意して頂きたいのは、まだ情報が明確でない部分もあり、すぐに一般の施設でおこなわれる検査ではありません。31日に研究会も発足?したばかりであり、検査の正確性や問題点などの検討はこれからなのです。現時点では臨床研究のみが容認された状況です。
日本産科婦人科学会は、声明で、「安易な実施は慎むべきだ」として、無制限に広がらないよう求める声明を発表した。診断内容や結果を妊婦に正しく理解してもらうため、専門家による診断前後のカウンセリングが不可欠と指摘。医療従事者と妊婦双方に「疾患を多様性として理解し、尊重する姿勢」が必要とした。出生前診断に関する見解を改定し、こうした新たな診断方法について、十分なカウンセリングの実施を求める、などとした。」との立場です。

概略は、インターネットでの記事を転記致します。一部補足
米国の会社が開発した新型妊婦血液の出生前診断 妊婦の血液に含まれる胎児のDNAを調べ、ダウン症の原因となる染色体異常(21番染色体)の有無を99%の確率で診断する。他に2種類の染色体異常(13番、18番染色体)も分かる。妊娠10週から実施可能で、臨床研究施設での費用は21万円の予定。
 従来の血液検査は精度が低く、確定には流産の危険を伴う羊水検査などを行う必要があった。
流産の危険があった従来の検査に比べ、安全に調べることができる一方、異常が見つかれば安易な人工妊娠中絶にもつながることから、カウンセリング体制の整備などが課題になりそうだ。
現時点では臨床研究として行う。

コメントです。
妊娠すると、ごくわずかに胎児の血液が母体血中にも紛れ込みます。この紛れ込んだ胎児血を選び出して、染色体の量を測定することで、染色体の数的異常(ダウン症では21番染色体が通常は2本が3本になっている)を調べる方法です。この研究自体は20年ほど前からなされていましたが、胎児血をどのように選び出すかが課題でした。
これらの「診断」としては、羊水検査や絨毛検査で染色体分析がなされていますが、羊水を採取するのには針による穿刺をして羊水を採取するのでおよそ0.5%程度の流産の可能性がありました。
今回の検査は、母体の採血でおこなえるので、流産の危険性は基本的にはありません。
なお、某女性有名人が受けたクアトロ検査、トリプル検査などの採血による検査は、危険率を計算する「確率計算」であり、「診断」ではありません。
おそらく、この検査をするには、遺伝の専門家によるカウンセリングが必要となる可能性が考えられます。または、実際におこなわれるには検査の指針ができあがってからになるでしょう。厚生労働省も、早期にガイドラインの作成を求めているようです。
したがって、逆にすぐに一般で受けることは困難でしょうし、今はもう少し経過を見る必要があります。