高橋先生のブログ

2017年生殖医療ジャーナルクラブ参加報告

毎年恒例の新年早々の生殖医療ジャーナルクラブに参加してきました。
荒木先生主催の超人的な勉強会で、1年間の有力な不妊症関連の論文を2泊3日で読み切ってしまう勉強会です。私は日曜日朝からの参加です。軟弱ですみませ~~ん!
今年で18年だそうですが、顔ぶれも徐々にかわり、以前は私も若手だったのですが、いつの間にか中堅(実際にはすでにロートルか?)なっているのですね。
さあ、1年間の不勉強を一気に取り戻して、今年もがんばっていきましょう。


























勉強した一部をご紹介致します。

1)胚の染色体異常の予防法        Fertility&Steril 2016 105:548~559
 胚の染色体異常は採卵時におこっているのですが、ミトコンドリアのエネルギー産生能は染色体の分離にも影響しているようなので、染色体異常の予防に男女の生活習慣やサプリメントが役立つ可能性があるようです。

 男性:オメガ脂肪酸 抗酸化物質の投与(つまり、アシストワンやEPA:エパデールなど)
 女性:運動の推奨、肥満女性には体重減少、非肥満女性には激しい運動の回避、禁煙、アルコール回避                
 酸化ストレスは加齢、肥満、精液の質の低下、卵子や胚の質の低下、に関わるので、抗酸化剤の摂取が、男性、女性いずれにも勧められる。特に40才以上には配慮が必要。
 これにより、血管系に良い影響を及ぼし、男性ではEDの改善をもたらし、健康状態にも好ましい影響を及ぼすと考えられる。
 ミトコンドリアが関わるCoQ10も期待できる方法と考えられる。
 心理的ストレスは卵巣からの血液の流れを変更させ、卵の発育能を低下させると考えられる。

コメント)生活習慣やサプリメントで、卵子・胚の染色体異常の発生を減少させられる可能性を学会でもある程度認めていることは意義ありますね。



2)男性不妊がない場合には、ICSIはIVFよりメリットはない。(SART2016)
 男性因子がなければ、生児出産率はICSIはIVFよりも低い。
 ASRM(アメリカ生殖医学会)声明「男性不妊を伴わないものや受精障害の既往のない場合、すべての卵子にICSIをルーチンにおこなうのは正当化されない」と公式声明している。
 また「原因不明不妊に、ICSIは臨床結果の改善をもたらさない。「採卵数の少ない患者にICSIをおこなうこと、高齢女性にICSIをおこなっても臨床結果を改善しない」「受精障害を阻止することで患者の妊娠率を向上させようとして、実際には妊娠の確率の低下を招いている」ことがおきている。

コメント)アメリカ生殖医学会でも、ICSIを過剰におこなっている懸念を表明しています。受精さえすれば、IVFの方がICSIよりも妊娠率が高いので、ICSIが必要のない方におこなっても、妊娠する可能性を下げている可能性があると言っているのですね。採卵数が少ない、や、高齢だから、との理由でICSIをおこなうのはやはり、お勧めは出来ないのですね。


3)2段刺激法:卵巣予備能が低下した患者さんで、採卵の同一周期で卵胞と黄体期からHMG注射を開始しても同様数の採卵と胚盤胞が得られた。
 HMG注射は、day2からと、初回の採卵後5日目から開始。HMGアンタゴニストで誘発。トリガーはGnRHアゴニスト(ブセレキュア)使用。

コメント)卵巣機能が低下している方には、採卵後5日後に来て頂き、超音波検査で大きくなりそうな卵胞がいくつかあったならば、そこからHMG注射を再開して、再度採卵することも可能なのですね。当クリニックでもすでに何人かの方におこなっています。


4)Fertility&Steril 2016;105:539~544
 子宮鏡下ポリー切除術後には、2周期以上待機してもIVFの成績は向上しない。ポリープ切除翌周期に排卵誘発開始しても問題ない。

コメント)今までは、子宮鏡の手術をおこなった場合には、体外受精は2回の生理を待ちましたが、今後は手術後、1回目の生理周期におこなっても良いですね。ただし、子宮筋腫の切除術の後にはポリープと同じとは言えませんので、注意は必要です。



5)凍結胚移植で、ホルモン補充周期(HRT)は、自然周期よりも優れているというものではない。しかし、モニターは必要なく、簡便で柔軟性のある計画を立てることが可能である。成績はほぼ同じで、有意差はないがHRTより自然周期の方がややよいかもしれない。HRTの方がキャンセル率が高いとの報告もある。HRTでも卵胞が発育することが5%に認められる。
 HRTでのホルモン剤は漸増法と定量投与法の方で、妊娠率に差はない。

コメント)凍結胚の移植は、学会でも、HRTが優れいているとは考えてはいません。ただし、移植日の数日の変更が可能であるという、柔軟性があるという意義でありました。これは当クリニックの従来から皆さんにお話ししているのと同じですね。また、ホルモン剤は、はじめから定量で使用しても良いようです。こちらの方が簡単なので今後はこのように致します。


6)新鮮胚移植後に生理が来た場合、凍結胚移植を遅延させずに、すぐに胚移植しても妊娠率に差がない。

コメント)今までは、採卵周期の翌周期はお休みの期間としていましたが、今後はご希望の方にはすぐに胚移植していきましょう。ただし基本的にはHRTが必要です。
 

7)胚盤胞移植で、すべての方の妊娠率が上がるとは言えない。
・Fertility&Steril 2016;106:244-250
 新鮮胚移植と凍結胚盤胞移植で得られた累積妊娠率に関して報告された論文では、新鮮初期胚移植と、新鮮胚盤胞移植で累積妊娠率の差はなかった。胚盤胞移植では胚移植にならない周期数も増える。

コメント)これも、現在の当クリニックのスタンスと同じです。すべての方に胚盤胞移植をしても、キャンセルとなる方もおり、累積妊娠率が上がるわけではないのですね。


8)子宮内にHCG注入で妊娠率が上がった。
・HumanReproduction 2016:31:2520~2526
 採卵後0.5mlの生食に500単位のhCGを注入した。初期胚day3を移植。HCG群と生食群で、化学的妊娠率は59.2%:31.3%、臨床的妊娠率は50.7%:16.4%だった。

コメント)これも、今後の追加検証が必要ですが、なかなか妊娠されない方への試してみる方法として、採卵直後、または凍結胚盤胞では、排卵に相当する時期に、注入しても良いと思います。これもご希望の方には試していけるように準備致します。

 以上、すぐに試行開始できるものもありますので、準備してまいります。
ご希望の方は次回来院時にご相談下さい。