高橋先生のブログ

卒業例から学ぶ不妊治療(7)流産回避の着床前診断(PGT-A)卒業例

30才台後半、初回は出産なさりましたが、その後4回流産を繰り返した方です。
流産するのが怖い、との目的で来院。不育症の検査をしましたが、明らかな異常はなし。
初回は9個採卵。ふりかけ法で3個正常受精し、2個胚盤胞になりPGT-A施行。正常のAランク胚なし。
2回目16個採卵。精子の状態不良のため顕微授精で8個中5個正常授精。4個胚盤胞になり3個PGT-A施行。2個は正常胚のランクAであり、1個胚移植して妊娠、卒業となりました。
1)着床前診断PGT-Aの最も良い適応は、今回のように流産予防効果、なのです。PGT-Aは胚の一部を採取するので、胚にはやはりストレスがかかります。また、PGT-Aで正常胚が増えるものでもありません。したがってPGT-Aで、妊娠数が増えるのではないのですね。
2)一方、胚移植あたりの妊娠率は上昇します。今回のように正常染色体胚を移植すると、60~70%妊娠(100%妊娠ではない)します。流産率は10%程度(流産を100%防止できるのではありません)です。
3)今回も質の良い胚を選んでも、5個中正常胚染色体胚は2個でした。年齢的には、胚盤胞であっても、正常胚は1/3~4個、程度なのですね。10個すべて染色体異常である場合も珍しくはないのです。

なお、PGT-Aの学会主導での臨床試験は2022年8月で終了しました。現在、学会がPGT-Aの保険化に向けて申請をおこなう方向で進めています。
現状は、PGT-Aを受けるには、2回の流産、または、2回の胚移植での不成功、の方が対象になります。
保険での採卵の方にはまだPGT-Aはおこなえません。PGT-A希望の方は、採卵から自費で受けて頂く必要があります。またPGT-Aの検査は現在も学会が承認している施設のみで受けられます。当クリニックも含めて、千葉県ではおよそ10施設が認可されています。