高橋先生のブログ

症例ご紹介 セントロメア抗体が陽性での、妊娠例

先日、SLE、抗セントロメア抗体(自己抗体)陽性の方(30才未満)が凍結胚盤胞移植で妊娠・卒業されました。

抗セントロメア抗体は、染色体に悪影響を強く及ぼすので、なかなか正常受精・分割が難しいのですが、幸運にも妊娠卒業なさいました。

抗セントロメア抗体は、自己抗体の一つで、分割するときの染色体の中心部に関係するセントロメアに対する抗体で、これがあると、染色体の分裂に悪影響を強く及ぼします。具体的には、体外受精・顕微授精でも、卵子が体にある状態ですでに染色体が分裂してしまっていることがあり、受精しても前核が多数認められる異常受精になる事が多いのです。

しかし、この方は、未熟卵が多かったものの、正常受精卵が13個得られて、異常受精は1個のみでした。そして、胚盤胞が1個、初期胚3個を凍結保存。2回目の胚盤胞移植で妊娠なさり、卒業となりました。

今回、比較的良好であった理由は分かりませんが、この方は、プレドニン10mg、タクロリムス3mg、ずっと使用していました。

通常は抗セントロメア抗体陽性の場合には、なかなか正常受精卵ができないのですが、卵子が成熟するには80日かかります。

プレドニンを3ヶ月以上継続して使用してみることも、今後試してみても良いかもしれません。タクロリムスは免疫抑制剤ですが、3mg程度ならばコロナに対しても問題ないとの意見もあります。今の時期には、プレドニンもタクロリムスも使用するには慎重を要しますが、試してみても良いかもしれませんね。

今後も良い経過であることをお祈りするばかりです。