高橋先生のブログ

44才の卒業例。総力を傾ける必要があるのです。

先日、44才の方が妊娠・卒業されました。やはり42才を超えるとなかなか、卒業までは大変なのです。この方には様々な治療をおこないましたのでご参考になると思いますのでご紹介致します。

42才で来院されました。9cmの筋腫の核出術後であり、片方の卵管が閉塞しているとのことでした。

年齢も考えてすぐに体外受精の提案です。

検査をしていく中で、様々な事がわかりました。皆さんご参考になると思います。

1)まず、風疹の検査で抗体がありませんでした。風疹抗体はHI法で32倍以上で十分な抗体価なのです。16倍以下の場合には不十分な抗体価で再感染もあるので、厚労省からはワクチンの接種が推奨されています。すぐにワクチンを接種しました。皆さん、風疹の検査結果が明確でない方は一度受けておいた方がよろしいですね。東京オリンピックで世界中から人が集まりますから、十分ご注意下さい。

2)手術中の検査では片側の卵管閉塞の診断でしたが、当クリニックでの子宮卵管造影検査では、両側の開通が確認できました。このようなことは珍しくはないのです。卵管の検査は、当クリニックで再検査すると半数が開通しています。1回の卵管の検査で決めつけない方が良いですね。

3)子宮鏡検査で子宮内膜ポリープと、マイクロポリープ、そして慢性子宮内膜炎を認めました。慢性子宮内膜炎にはビブラマイシンを投与して治癒を確認。子宮鏡手術で子宮内膜ポリープも切除しました。

4)その後は体外受精を開始。

1回目 採卵3個 初期胚凍結1個 胚盤胞なし  凍結胚移植するも妊娠せず

2回目 採卵5個 初期胚移植1個で妊娠せず 胚盤胞なし

3回目 8個採卵 初期胚1個移植で妊娠せず 胚盤胞1個凍結  凍結胚移植するも妊娠せず

4回目 採卵2個 分割胚得られずキャンセル

5回目 採卵3個 初期胚1個移植で妊娠せず 胚盤胞1個凍結  凍結胚で化学的妊娠

6回目 5個採卵 初期胚1個移植で妊娠せず 胚盤胞1個凍結  その後の自然周期での凍結胚i移植で妊娠 卒業


初診から卒業まで1年半かかりました。

①受精方法は、体外受精であり、顕微授精ではありませんでした。妊娠率は、顕微授精よりも体外受精の方が3~4%高いのです。受精するならば、顕微授精よりも体外受精の方が良いのですね。

②初期胚移植も併用しました。結果的には胚盤胞での妊娠でした。これは議論がありますが、40~42才以上では、胚盤胞までいくのは受精卵の3個に1個、43才以上受精卵の5個に1個程度なのです。したがって、1個初期胚で胚移植したり、凍結しておくことは意義ある事だと考えています。

③採卵数は多ければ多いほど、キャンセル率も少なく、1回の採卵での妊娠率や出産率も高くなるのです。この方も積極的に排卵誘発をおこないました。ただし、必ずしも注射のみでではなく、クロミッド単独での採卵もありました。

5)その他には、鉄不足、ビタミンD・ビタミンC不足、DHEAs低値、亜鉛不足、であったので、鉄剤、総合ビタミン剤のアシストワン、DHEA、亜鉛、なども併用しました。これらは早期に検査していますが、サプリメントも総動員です。その後には、抗酸化作用を求めてメラトニンやレスベラトロールも使用しました。妊娠に対しては、異常値でなければ良いのではなく、理想値を求めて対処すべきなのですね。

高年齢の方には、総力を傾けてようやく妊娠へと結びつきます。40才を超えている方は特に急いで治療に取り組んで下さい。

この方には、今後も順調に経過して無事に出産される事を祈るばかりです。