高橋先生のブログ

ヨーロッパ精子バンクのセミナーに参加しました

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2月下旬に、横浜で、ヨーロッパの精子バンク組織の責任者が来日されて、ヨーロッパの精子提供についてのセミナーがありました。

ヨーロッパでの精子提供者は、精子提供をする目的としては、人のためになりたい、自分のDNAが持続することなど、に意義を感じているとのことです。

金銭的には、1回の精子提供に1万円弱の謝礼しか渡していないようで、精子バンクから医療機関に提供するときには、1検体で6万円程度ぐらいのとのことでした。精子を売買しているような金額ではなく、提供者はボランティアで精子提供をしている事を感じました。

一方、精子提供者の検査は、私が考えていたよりもかなりしっかりおこなっていて、提供者の親族に遺伝性の疾患がないか、のみではなく、血液検査でどのような遺伝病の因子があるかも調べていました。希望ならば、提供を受ける女性側にもどのような遺伝病の因子があるかを検査して、遺伝病が発症しないようにマッチングをおこなっているとのことです。ちなみに、われわれはみんな、何らかの遺伝病の因子を持っていると考えられています。両親の遺伝病の因子がそろうと、子に発症することがあるので、そのような可能性を少なくする(完全になくす事はできません)ように注意しているそうです。これは、デザイナーズベイビーとの考えとは違い、疾患を少なくすることが目的である、ことを説明されていました。

現在、日本では精子提供がおこなわれにくくなっており、ごく一部の施設でしかおこなわれていません。将来、提供精子で生まれたお子さんに、その事実を明らかにすることが求められるようになり、それが負担になっていることが大きな理由の一つとなって、精子提供者が激減している、と考えられています。

無精子症のカップルには、現在の日本では、提供精子による人工授精(AID)しか認められていませんが、その妊娠率は2~3%程度とされています。実際には、AIDが認められているならば、体外受精などの妊娠率の高い手段を用いる方が良いのではないか、との考えも多くあります。

現実的には、数年前よりも、提供精子による不妊治療がおこなえなくなってしまっているのが、現在の日本の状況です。

一方、ヨーロッパの状況を伺うと、必ずしも提供者の情報を生まれた子に伝えることがすべての国でおこなわれているわけでもないようです。また、20年前は今の日本のように、精子提供がオープンにおこなわれてはいなかったとのことでした。

したがって、今後の日本も、現在のヨーロッパの提供精子事情のように、よりオープンになる可能性はありますよ、との意見を頂きました。

何とか、今のこの状況も改善されるようになれば、との想いを持って帰ってまいりました。